お乾燥わかめのはなし

ボカロPやってるものです。

【歌詞詳解】「玲瓏毒々」〜ストーリーよりも瞬間風速〜

備忘録として、自分の書いた歌詞を噛み砕いて説明します。

今回は、「玲瓏毒々」を紹介します。以下、視聴のリンクと歌詞を掲載しました。(音楽分析編も執筆予定)

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 玲瓏毒々
 
 一番
△ちょっとした諍いが私を孤独にしたから
 可憐なあなたとお話したくて
 初めは愚痴だけ あの子が、あの人が
 いつの間にか楽しく笑いあってた
 
▲でも私気づいちゃったの
 あの子も、あの人も
 あなたがやったから
 そうでしょう、違うの?
 (▲) 
△照り生えて あなうつくしや
 好奇心抑えられず かぐわしい香り求め
 あなたのもとへ
 
▲でもそれは 間違い 間違いだ
 あまりにも近づいたなら
 もう獲物でしかない 触手に刺され終わり
 
 二番
△「よくある偶然」所詮はその程度
 無駄な因果探り 疑心暗鬼になるより
 興味を惹かれる その人柄、その姿
 あなたがいないと楽しめないからさ
 
△いたずらに目を引く色彩と
 優雅な揺蕩いで
▲死してさえ激痛をもたらす
 玲瓏▲毒々の有様だ
 
 間奏
 
▲捉えられたら俯くしか
 常識を蔑んだならば
 野蛮な序列に倣い
 甘んじて受け入れなさい
 
△遠くから 眺めるだけの頃よりは
 あなたを知ったの
 怖くないの? 怖くないよ
 今はただ離したくないの
 
 三番 
△でも、信じられないよ
 凶器になりうるその手を
 だから振り払った
 そして その切っ先は私の眼前に
 
△照り生えて ▲業映し出す
△どうしたの? ▲真っ青な顔で
△ただずっとあなたのそばに
▲痺れわたる苦痛とともに 
△「『悪し』を負った」私を見つめる
 掴みどころのない表情 それは
 玲瓏▲毒々の有様だ
 
△嗚呼
 
▲「貴女がいないと楽しめないからさ」
 
△肩を支えてくれた 天使のようなその手は
▲終わらない監獄へと続く 悪魔ような囁きは
△玲瓏だった

 間奏

▲油断するな

 

 今回の曲では、▲と△でパート分けをしています(といっても、どちらも結月ゆかりなのでかなり分かりにくい(笑))。

 全体の展望については、作詞の先に詳細に残したメモがありましたので、そちらを引用しつつご紹介します。

 

・コンセプト、キーワード

 裏と表

 美しいけれども、近づいたら傷ついてしまうバラのような、孤高の人物。

・モデル

 カツオノエボシ

 クラゲのような生き物で、水色や紫ががった色彩が美しい。毒を持っていることで有名。

・ストーリー

 とある女子高生が友達と仲違いしてしまい、学校でひとりぼっちになってしまった。そんな時、非常に美しい一人のクラスメイトに興味を惹かれ、仲良くなる。

 初めのうちは優しい人物だと思っていたが、付き合っていくうちに、危険人物だとわかる。そのクラスメイトが「気に食わない」と思った人物が、なぜだか酷い目に遭うのだ。

 恐ろしくなった主人公は距離を置こうとする。それに怒ったクラスメイトは最後に主人公をも呪ったのだろうか、主人公は偶然足を骨折してしまい、介助のためにそのクラスメイトがずっとついてまわるようになった。もう恐ろしくて、離れることが出来ない。

 

 この曲を作ったきっかけは「ギャップのある曲を作りたい」という思いつきです。私の好きな優雅で美しいイメージと、激しいメタル調の音を相反させるような形で使いたいと思いました。そこから、「裏と表」「美しいけれど近づくと危ない」とイメージを発展させていきました。

 ストーリーに関しては曲にはほんのり載せる程度で、あまりメインにはしていません。私は勝手に百合だと思い込んでいますが、みなさんの多様な解釈を尊重します。△が主人公、▲がクラスメイトに対応しています。

 

 それでは、詳解に入ります。

 

 △ちょっとした諍いが私を孤独にしたから
 可憐なあなたとお話したくて
 初めは愚痴だけ あの子が、あの人が
 いつの間にか楽しく笑いあってた

 

 導入部分です。些細なきっかけから二人が仲良くなったことがわかります。静かでかわいらしい曲調なので、あまり難しい言葉を入れず、ポジティブ過ぎないけれども小さな楽しみが生まれたことを表しました。

 「あの子が、あの人が」はこの後何度も韻をふむために擦られることになるフレーズです。

 
▲でも私気づいちゃったの
 あの子も、あの人も
 あなたがやったから
 そうでしょう、違うの?
 (▲人間らしさが仇となる) 

 

 心の内に不信感が湧き上がってくるシーンです。早速「あの子も、あの人も」が出てきています。学校が舞台なので「あの子」は生徒、「あの人」は先生などでしょうか? いずれにせよ、「この/その」ではなく「あの」と言っているため、自分から遠く、情報が確かでは無いことがわかります。

 「そうでしょう、違うの?」のようなセリフになっている歌詞は私の大好物です。特に、この例のようにBメロの最後には使いがちな傾向にあります。これにより、思いをぶつけるような歌詞になり、サビに繋げやすいからです。

 「人間らしさが仇となる」はほとんど聞こえません(聞かせる気がない)。主人公の好奇心に対する警告でしょうか。


△照り映えて あなうつくしや
 好奇心抑えられず かぐわしい香り求め
 あなたのもとへ
 

 ストリングスとピアノを用いたふんわりして美しい伴奏の部分です。歌詞もそれに合わせて柔らかく美しいイメージにしています。

 「照り映える」は古語「にほふ」の訳語として知りました。それを少し引きずって、「あなうつくしや(訳:ああ、きれいだなぁ)」をつけています。「あなたのもとへ」向かう理由となるよう、歌詞が繋げられています。


▲でもそれは 間違い 間違いだ
 あまりにも近づいたなら
 もう獲物でしかない 触手に刺され終わり

 

 ここは、16分のキック、ディストーションギター、ピアノの不協和音など、激しい曲調に変化する部分です。その分情報過多にならないよう、歌詞はリフレインなどを入れてあまり複雑にならないようにしています。

 「獲物」「触手」など、カツオノエボシから連想される言葉を組み込んでいます。
 
 二番
△「よくある偶然」所詮はその程度
 無駄な因果探り 疑心暗鬼になるより
 興味を惹かれる その人柄、その姿
 あなたがいないと楽しめないからさ

 

 1番と同じ曲調ですが、よく見ると歌詞は1番と違い漢字が多用されています。主人公はクラスメイトを信じようとしているものの、どこか緊張して硬くなっている様子を表しています。

 ここの韻の踏み方は少し工夫されています。同じ単語が同じ場所に来る韻ではなく、少しずらしてつかっています。分かりにくいですが、文字の位置で表すと、

 

 あのーこが あのーひとが
 そのひとがーらそのすがた

 

のようになっています。なかなか上手くできたかと思います。


△いたずらに目を引く色彩と
 優雅な揺蕩いで
▲死してさえ激痛をもたらす
 玲瓏▲毒々の有様だ

 

 △部分はカツオノエボシ(と重ね合わせたクラスメイトの)風貌を表しています。「いたずらに」も古語で、「無駄に/むやみに」といった意味です。
 ▲意図的に強い言葉を使っています。カツオノエボシの毒を持つ性質を表す部分です。ここでついに、タイトルになっている「玲瓏毒々」という言葉が出てきます。「透き通るように光り輝く」という意味を持つ「玲瓏」と、「毒々しい」を掛け合わせた造語です。モデルであるカツオノエボシを端的に、かつ印象的に表せたと思います。

▲捕えられたら俯くしか
 常識を蔑んだならば
 野蛮な序列に倣い
 甘んじて受け入れなさい

 

 こちらは1番と順序が違い、▲のパートが先です。もう△と▲のギャップを利用したインパクトは狙っていないので、曲構成のスムーズさからこのような順番になっています。

 「〜しか」は文字数と韻の関係で「〜しかない」を省略しています。言い切らないことで諦めの悪さを皮肉るようなニュアンスもあると思います。

 また、変わった言葉遣いでの印象を付けを狙っています。そのため、目的語と術後が一般的には対応しないような組み合わせを選んでいます。

 後半の2行は、私の全楽曲の中でも最も気に入っている韻のひとつです。よく見ると、頭とお尻が揃った形になっています。初めはなかなか思いつかなかったので、トイレで唸ったり、パソコンの前で暴れたりして捻り出しました。この部分は、(ボカロでの再現はなかなか難しかったのですが、)人間が歌う場合には非常に周期の短いビブラートをかけて、蛇のような声色で歌うべき部分です。

  
△遠くから 眺めるだけの頃よりは
 あなたを知ったの
▲怖くないの? △怖くないよ
△今はただ離れたくないの
(▲今はただ離したくないの)

 
 ここは特にストーリーには対応させず、二人の掛け合いのようなシーンにしました。サビの前半とは打って変わって、前向きに手を取り合うようなイメージです。 


△でも、信じられないよ
 凶器になりうるその手を
 だから振り払った
 そして その切っ先は私の眼前に

 

 接続詞を使用して、主人公の心の移り変わりをわかりやすくしています。「凶器」という言葉を用いて危険性をハッキリと明示しています。
 
△照り映えて ▲業映し出す
△どうしたの? ▲真っ青な顔で
△ただずっとあなたのそばに
▲痺れわたる苦痛とともに 

 

 「照り映えて」でまた同じく明るい方のサビが始まると思わせて、「業映し出す」で一気に落としています。「業」の部分は音もそれまでではE♭だった音をF#に変えています。メジャーの1度になるのでむしろ明るくなるような気もしますが、単に音が高く鋭くなることのインパクトを狙いました。

 ここでの「業」はカルマの意味で使っています。あまり深い意味はありませんが、因果応報のイメージから、自分の今までの行いを映し出されるという意味で使っています。

 △と▲を交互に入れて、今までよりミスマッチで不安定な印象を狙っています。「痺れわたる〜」の部分は▲ですが不協和音を直して使っています。この部分は△ではE♭メジャーの音を借用している部分なので、ここではマイナーであることを強調するため、コード感を崩したくなかったことが理由です。「痺れる」はもちろん触手のイメージから来ています。


△「『悪し』を負った」私を見つめる
 掴みどころのない表情 それは
 玲瓏▲毒々の有様だ

 

 歌だけ聞くと非常に微妙なのですが、「足を折った」をそのまま使うのは情緒がなかったので、同音異義語を無理やり当て嵌めて「『悪し』を負った」としています。何か悪いものを背負った、という意味でしょうか。

 タイトルコールは2回目ですが、1回目よりも調声を崩しています(ど↑くどく、みたいな感じに)。K-POPアイドルの歌い方を参考にしたと思います。発音もぐちゃぐちゃにしたかったのてま、歌詞は

 

 れ ろ だくだぐの

 

と打ち込みました(笑)。
 
△嗚呼

 

 1度目のタイトルコールはブレイクに繋げて落としたのに対し、ここはさらに上げるために、コーラスを差し込んで間をなくしています。「ああ」の表記は色々あるので、大抵使う時々で場面に合わせたものを選んでいます。

 
▲「貴女がいないと楽しめないからさ」

 

 カギ括弧がついているのはセリフであることを強調するためです。2番のAメロでの△の歌詞を引用しています。2回とも「あなた」を「貴女」と表記しているのはただ私が百合厨だからです。

 後ろにはコーラスなどをかなり複雑に入れていて、混乱を作っています。▲パートのコーラスとして、「私もひとりぼっちだったんだよ」という歌詞が入っています。よく聞けばわかるかもしれません。

 
△肩を支えてくれた 天使のようなその手は
▲終わらない監獄へと続く 悪魔ような囁きは
△玲瓏だった

 間奏

▲油断するな

 

 前半は対句のようにしました。終盤ということでメロディーは発展させずに畳み掛けています。

 「玲瓏」はタイトルコールを呼び出すと見せかけるフェイントになっています。△のまま明るく終わると思わせるためのミスリードです。2回ひっくり返るとは予想しずらいという考えでこのようにしました。この曲の目標であった「ギャップ」の要素を最大限生かしたオチにできたかと思います。

 

 詳解は以上になります。コンセプトに合わせて、目的を持ってなるたけ技巧的な歌詞をかけたと思います。

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